第16章 泣いてなんて、ないよ
「で、前もタマと会ってましたよね?
おたくとは、一体どういう関係で?」
『私と彼は、古い友人ですよ。とは言え、こんな時間までお借りしてしまい申し訳ありませんでした。
もう遅いので、私はそろそろ失礼致します。どうもお邪魔しました』
私は、彼の鋭い視線から逃げるように背を向けた。
「え、もう帰んの?」
『はい。
あぁそうだ。今日、環君は雨でずぶ濡れになったので、風邪をひかないように 温かくして休むんですよ?体調管理は、アイドルの基本ですから』
「…ん、分かった…」
私が告げると、環は別れを惜しむように寂しそうに頷いた。
「あ、えりりん!
明日、ちゃんと てんてんに謝れよ!ぜってー大丈夫だから」
『!
はい。ありがとう』
「あと 男心、ちっとは勉強しろよな」
『ぅ、…はい』
「??あの、…今日は本当に、ありがとうございました。
今後とも、IDOLiSH7共々よろしくお願い致します!」
またぺこりと頭を下げるマネージャー。
『はい。こちらこそ。TRIGGERとIDOLiSH7、これから良い関係を築ければ私も嬉しいです。
では、これで』
私も倣って頭を下げ、彼らの寮を後にするのだった。
「……まぁ、IDOLiSH7の敵になるような、悪い奴ではない…か」
思わぬ収穫があった。
IDOLiSH7のマネージャーと顔馴染みになる事が出来たし、それにあの…二階堂大和という男。調べてみる価値はありそうだ。
さらに言えば、逢坂壮五も実は気になっていた。
バーで環が言っていた。
“ そーちゃんに、CD聴かせて貰ったんだ ” と。
どうして壮五が私の、Lioの音源を保有している?それは普通ありえない。手に入れる為には、それなりに苦労するはずだ。
私がデビューライブに招待した芸能関係者の血縁か?はたまた、多少のワガママならまかり通るくらいの 強いコネクション を持っているのか…。
なんにせよ、大和と壮五。
この2人にはきっと、何かある。