第16章 泣いてなんて、ないよ
「四葉様が貴女の心に風を吹き込んだのは、たしかでしょう。
ですが、あの御三方は それより前に、貴女の心を少しずつ癒してくれていたのではないですか?」
「さっき、あんたが言ってた…、なんだっけ。
えりりんの汚れた心の部屋を、俺が綺麗にした。みたいなやつ。
あれも、俺がその部屋に入る前に、TRIGGERが、ちょっとずつ掃除してたんだと思うけどな」
そうか。そうだ。私は、とっくに彼らに…TRIGGERの皆んなに、救われていたのだ。
どうして、こんな簡単な事に気が付けなかったのだろう。
それはきっと、彼らがあまりにも自然に私の側にいてくれたから。
当たり前の顔をして、私の心を救っていてくれたから。
天は、私が強引に連れ出した学園祭を、楽しかったと言ってくれた。
楽は、私が何度断っても、諦めないで飲みに誘ってくれた。
龍は、私の目を見て真っ直ぐに 好きだと伝えてくれた。
もう、よく考えなくても分かる。
私を癒してくれていたのは、TRIGGERだけじゃない。Re:valeの2人も同じだ。
まるで本当の恋人みたいに、触れてくれた百。
出会いの喜びを歌に代え、感動的な言葉をくれた千。
気が付けば、私はなんと恵まれていた事だろう。
『明日…、謝らないと。九条さんに。
突き放すような、酷い言い方して ごめんなさいって。
許して、貰えるかな』
「ぜってー大丈夫!だってあの人ら、えりりんの事めっちゃ好きじゃん!
あ、でも 俺の方が、あんたの事好きだって自信あっから…って、なぁ聞いてる?」
ふと、窓の外に目をやる。
もう、雨は上がっていた。