第2章 …なぁ。俺達、どこかで会ったか?
【side 八乙女楽】
翌日の昼。
「……何してんだよ。おまえら」
ドアの前に張り付いているのは、天と龍之介。
俺は思わず2人に そう問いかけた。
「あ、お疲れ 楽。…あれ、見てよ」
そう言って俺に場所を明け渡す龍。仕方なく俺も姿勢を低くして 室内を覗き見る。
『………』
中には、中崎がいる。
ちなみに、昨日の帰りに見た光景と全く同じだ。昨日と同じ位置に座り、昨日と同じようにモニターに噛り付いている、あいつの背中。
「…なんだあれ。まだ俺達の資料映像見てんのか…。新曲は大丈夫なのかよ」
「昨日から、帰ってないらしいよ彼。姉鷺さんの話では」
「え…そうなのか!ちゃんと休んだのかな」
…そんな事、俺が知るわけないだろうが。
「ちょっとアンタ達!早く車乗ってよね!もう出るわよ!」
姉鷺が、相変わらずキーキーと高い声で喚いている。
このあとTRIGGER3人揃っての、インタビュー取材があるからだ。
今日の現場は、かなり遠い。しかし新人である俺達は どんなに遠方であろうと喜んで出向く。
…だがそれも、今だけだ。
このまま努力を続ければ、必ずTRIGGERなら天下を取れる。そして、誰もが認めるトップアイドルになったその時には…。
相手方を、遠路はるばる俺達の所まで通わせてやる。