第16章 泣いてなんて、ないよ
あまりにも真剣な表情と声色に、俺と環は 壮五の方を凝視していた。
その視線に気付いた彼は、焦ったように顔の前で ぶんぶんと両手を振る。
「あ、ご、ごめん環くん!それに、大和さんも。
僕の考え過ぎですよね、Lioに会った事もないのに こんなふうに言っちゃって」
「はは、大丈夫。気にしてないって。な、タマ」
俺のせっかくのフォローにも反応せず、環は暗い表情で俯いてしまっている。
え、なに?何この暗い雰囲気。やだ気まずい。
「そ、それにしても、一体 Lioは今頃どこで何してるんだろうな!
血眼になって探してるスカウトマンを2年も掻い潜るって事は、もしかして海外にでも行ってんのかね」
「はっ!大和さん!」
壮五は、たちまち元気を取り戻して 輝く顔を俺に向けた。
「それに関しては、僕 推理している仮説があるんです!」
「す、推理ってソウ…。なにお前そんな事してたの?」
それにしても、また仮説か。まぁ、今はどこにいるかも知れない存在について話しているのだ。不確定な要素が多いのは仕方ないけれど。
「実はLioは、まだ芸能界にいるんじゃないでしょうか!」
何故かピクリと、環の肩が反応した。
「灯台下暗しって、言うじゃないですか?実は意外と身近にいて、スカウトマンや芸能事務所も、逆にその存在に気付けていないのではないかと僕は睨んでいるんです!
流石にアイドルは引退して、歌手としての活動は控えているものの、例えばマネージャーやプロデューサーに転身してるとか…。これから世に羽ばたこうとしている、どこかのアイドルを影から支える支援役に徹しているんですよ!」キラキラ
また、何故かピクリと、環の肩が反応した。
「はは。ソウは漫画の読み過ぎだな」
俺は壮五の行き過ぎた妄想を 軽く笑い飛ばした。しかしその隣で、環は小さく呟くのだった。
「そーちゃん、鋭い…」
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