第16章 泣いてなんて、ないよ
「そうなんだよ環くん!!!」
「うわぁ!」
静まっていたリビングに、突然 場違いにも思える元気な声が響き渡った。そして少ししてから、驚いた環の声も後を追った。
突如としてこの場に現れたのは、壮五だった。
心底 嬉々とした表情で、環の顔を覗き込んでいる。そして、その胸には大切そうに一枚のCDが抱かれていた。
「な、なんだよ!そーちゃん、びっくりすんだろー」
「環くん!僕は嬉しいよ…君がLioに興味を持ってくれるなんて!」
今にも嬉し泣きしそうな壮五の隣で、一織がおずおずと手を上げた。
「あの…そろそろ私は着替える為に、部屋に戻りますね」
「おー、ありがと いおりん」
そして、一織は脱いだ上着と鞄を持って、やっと環から解放されたのだった。
「そういや、ソウはLioのファンだったよな。俺よりは詳しく知ってるんじゃないか?」
「え!?そーちゃんLioの事好きなの!?」
環は、俺の言葉を聞くなり 壮五に食ってかかるような勢いで詰め寄って行った。
「勿論!大ファンだよ!」
「なんっだよ初耳!!そんな大事なこと、なんでもっと早く俺に教えてくれなかったわけ!?」
「言ったよ!何度も言ったよ!でも環くんが全く興味を示さなかったんじゃないか!」
2人とも、だんだんヒートアップしてきてる。俺は2人の肩に、片方ずつ手を置いて宥めにかかる。
「はいはい、2人とも落ち着けー。
で?ソウ。その大切そうにずっと持ってるそれは、何なんだ?」
俺がCDを指差して言うと、また壮五の顔がキラキラと嬉しそうに輝くのだった。