第118章 Another Story
私達は、一つのスマホ画面を共に覗き込む。私はパスタを、天はオムライス。それから海鮮がたっぷり入ったサラダをオーダーした。
ほどなくして、到着した食事を一緒にとる。少し味気ない食事も、天と食べれば美味しかった。
美味しい食事とは、何を食べるかではなく 誰と食べるかだ。という格言を残した人は本当に偉大だ。
私は、天にシャワーの順番を譲る。彼が入った後に浴室へ足を踏み入れると、まだ中は暖かかった。白い湯気に、薄い石鹸の匂いが混じっている。
髪にトリートメントを馴染ませながら、ぼんやりと考える。そういえば、この家にはベットがどこにも見当たらなかった。
二人して風呂にまで入ったわけだが、思い起こすと彼は一度も、今日ここに泊まるなどとは口にしていない。
ということは、今日は “しない” のだろうか。
『って、私は一人でなんて恥ずかしいことを考えてるんだ…』
その小さな呟きは、シャワーの音で見事にかき消えた。