第118章 Another Story
「もう九条さん!真剣に話、聞いてあげてください!」
ぷくっと頬に空気を入れて、理は愛らしく憤慨する。しかし九条は彼女の訴えを受け入れることなく、子供のようにそっぽを向いた。彼女はそれでもめげる事なく、うっとりと両手の平を胸に当てて目を閉じ続ける。
「素敵じゃないですか。愛し合う二人が、障害を乗り越える為に力を合わせて頑張る姿…!」
「障害…」
九条は、自分が障害扱いされたことに幾分かのダメージを負った模様だ。
「私からも、お願いします!二人の交際を認めてあげて!
えりりんは、私がアイドルを目指すきっかけになったぐらい素敵な人なんです。ほぼ初対面だった私の為に、すっごい歌とダンスを披露してくれたんですよ!私にとって、かけがえのない人なんです。きっと、きっと天お兄ちゃんのことも大切にしてくれます!」
『理ちゃん…』
「昔の荒んだ兄ちゃんだって、そんなえりりんだからこそ、すぐに大好きになったんです!それはもう、慕ってるとかいうレベルを飛び越えて、結婚の約束をするくらいまで大好きで!」
『理ちゃーん!?』
「ほぅ。天というものがありながら」
九条は顎をさすりながら、鋭い視線を私に投げた。
『こっ、こっ、こ、こ』
「ニワトリの真似程度で、誤魔化せるとでも?」
『こ、子供の時の話なんですー!』
私は飛び降りるようにソファから降りて、硬い床で正座した。