第15章 俺…もしかしたら…、ホモなのかもしれない!
『…女性が苦手、というわけではないんですよね?』
この業界、バイセクシャルの人間も少なくない。別に彼がそうでも驚きはしないが…
「……お、俺は…、女の人が、好き」な はず
どんどんと語尾を小さくする龍之介。この反応…まさか本当に彼は…。
私は無意識のうちに、疑心の目を向けてしまっていたのだろう。龍之介は慌てた様子で懸命に弁明する。
「いや!本当だって!俺は男よりも女性が好きだ!」
『わ、分かりましたから 大声は控えて下さい』
真実は明るみに出ないが、これ以上 彼を問い詰めるのは気が引ける。
「…俺がもっと、女性に慣れていれば良かったのに」
落ち着いた彼が、ぽつりと呟いた。
『!』
それを聞き、妙案が浮かんだ。
見つけた。私が彼にしてあげられる事。
『そうですよ。慣れれば良いんですよね』
自分の中でだけ納得する私。目の前の彼は首を傾げている。
「慣れる?何に?」
『女性にですよ』
「は!?えっと…ちなみに、どうやって?」
『遊んで遊んで遊ぶ。勿論、相手はプロのお姉さんですよ?間違っても素人には手を出さないで下さいね』
そうすれば、彼は本物のエロエロビーストに仕上がるかもしれない。本当の彼の方を、世間が求めている龍之介に近付けるのだ。
そうなれば、もう自分を偽る必要はなくなる。
嘘を本当にしてしまえば良いのだ。
「なん…っ、春人くん!?ちょっ 凄い事言ってるよ!?」
『…無理ですか』
「むっ、無理無理っ!無理だ!!」
ブンブンと頭を振って、全力で拒否する龍之介。
『そうですか、良い案だと思ったんですけどね』荒療治
「平然と言ってのける君が怖いよ俺は…。
いくら慣れる為だからって、見ず知らずの女性と関係を持つなんて出来ないよ。相手の女の人にも悪いしな」
今の言葉の裏を返せば、
“ 見ず知らずの ” “ 女性 ” でなければ、彼は荒療治を受けてくれるという事か?
それなら…。
『十さん。この後、もう少しだけ時間を貰っても良いですか?』