第15章 俺…もしかしたら…、ホモなのかもしれない!
「本当は俺…、女の人の扱いに慣れてなんかいないんだ!」
うん。知っている。
「実際は手を握るのだって緊張するし!」
それも知っている。
「それに、別に身体だってエロくもないしセクシーでも無いと思う」
うーん、それはどうだろう。
「なんだか、ファンの皆んなを騙してるようで 気が引けるんだよな…」はぁ
彼は、今日何度目かの溜息を吐いた。
やはり、私が思慮していた通りの悩みを抱えているようだ。早めに気が付いてよかった。もし気付くのが遅れて、龍之介の中でこの火種が爆発でもしてしまっていたら…
いきなりTRIGGERをやめる!などと告げられるシーンを勝手に想像して身震いした。
『…騙す、ですか。そう言えば聞こえが悪いですが、演じるという言葉に置き換えてはどうですか?
アイドルたるもの、求められる形を演じるのは仕事の一環ですよ?
まぁそれでも、貴方が 演じる事に対して苦痛を感じ ストレスになってしまうのなら それは問題ですが…』
元々、アイドルの語源は “ 偶像 ” から来ている。求められるイメージをファンに伝える。それがアイドルの仕事だと私は捉えていた。
「いや、そこまで重く捉えてもらわなくても…。
今の仕事が嫌なわけじゃないんだ。やりがいも感じてるし、天や楽と歌うのも好きで。アイドルをやる事に不満なんてない。
だからこそ、自分が不甲斐ないというか」
なるほど。皆んなに求められる自分が上手く表現出来ない事に、苦しんでいたのか。
概ねは予想通りだが、その上で 私がしてあげられる事はなんだろう。