第118章 Another Story
自ずと距離が縮まって、整った顔が近くなる。どれだけ時間を共に過ごしても、何度 唇を合わせても、この端整な顔に慣れる気が一向にしない。
一気に体ごと後ろに引き、天から距離を取って口元をナフキンで拭う。
「いつも思うけど、反応がいちいち可愛い…。ここが外で良かったね」
『も、もし室内だったらどうなってたの!』
「へぇ、知りたいんだ?」
『遠慮します…』
こんな調子で、彼と公私共にパートナーとなった時から私はペースを乱され続けていた。
とにかく!と、私は伝票を掴みながら立ち上がる。
『スーツは、私にとっての戦闘服。天には悪いですけど、交際宣言はこの格好で執り行わせていただきます!』
「構わないよ。エリのしたいようにしてくれれば。ボクは、キミが将来のことを真剣に考えてくれてるって分かっただけで嬉しいから」
親御さんへのご挨拶。なんて、確かに将来を共に歩いていくと想定していなければ出来ないだろう。
私も天も、将来は結婚を視野に入れている。結婚とは、家族が増えるということ。増える家族は天だけではない。天の家族も、私の家族になるのだ。つまりは、天の父である九条も私の家族となる。
上手くやらなくては。養父とはいえ、相手の親に嫌われでもしたら後々、色々とやりにくくなってしまう。