第15章 俺…もしかしたら…、ホモなのかもしれない!
『貴方は…本来の自分と、世間が求める自分とのギャップに 苦しんでいるのではないですか?』
「…………へ?」
私が言うと、彼は素っ頓狂な声を上げて スプーンをスープ皿の中にボチャンと落とした。
『??
あれ、違いました?』
彼の反応を見るに、どうやら私は的外れな発言をしたようだ。
では、何故 彼の様子はおかしかったのか。他に何か、彼を悩ませる原因があるのだろうか。
「違わない!違わないよ。うん…違わない、」
言いながら、スープに沈んだスプーンを救出する龍之介。その顔は、何故かトマトのように赤い…ような気がする。
「そうか、春人くんが気付いてたのは、そっちの方か…」ほっ
『え?何か言いましたか?』
ぶつぶつと呟いた言葉は、まるで聞き取れなかった。しかし彼がなにやら安堵しているのだけは見て取れた。
私は2杯目のカクテルを頼み、龍之介は1杯目の酒に口を付ける。
そして、意を決したように話を始める。
「…春人くんは、気付いてたんだな。本当に、俺達の事よく見てる」
『仕事ですから』
仕事だから。この言葉は、本心と嘘が半分半分。
彼等とはもう、仕事上の付き合い ビジネスライクと割り切れる関係を通り越していた。
苦しんでいれば助けたいし、悩んでいるなら話を聞きたい。そう素直に思えるほどには、私は彼らが好きだ。