第116章 心、重ねて
『私ね、自慢じゃないんですけど、それなりに良い歌が作れて それなりに良い歌詞が書けます』
「い、いきなりどうした」
『作詞作曲だけじゃなく、ダンスの振りだって作れるし。後はまぁ、頭が切れます』
「自慢じゃないんだよね?」
『それに加え、舞台演出とマネージメント、効果的なプロデュースも。あ、後はあらゆる車の運転も出来ますよ』
「えっと、春人くん?」
3人は、何が言いたいんだと丸くした目をこちらに向けた。私もそろそろ恥ずかしさで限界だったので、まとめへと入る。
『で、ですからその…。こんな最強のプロデューサー、他に居ないですよね!まさに、最強アイドルの隣に相応しいと思いません?』
しん…と、車内が静まり返る。あまりの滑りっぷりに、ハンドルを待つ手まで滑ってしまいそうだ。沈黙に耐えられず、私はさらに1人で喋り続ける。
『それって凄腕ピアニストよりレアな存在だと思いませんか?つまり、えっと、こんな私を逃したら、TRIGGERは絶対に後悔す』
「っぷ、」
最初に吹き出したのは、誰だったろう。それが分からないくらい、車内はすぐ3人の笑い声で満たされる。
「っふふ、キミ、どうしてそんなに、必死なの…!」
「あはは!春人くん、ありがとう!俺達の隣を選んでくれて」
「そうだよな!俺達の…TRIGGERのプロデューサーは、やっぱ あんたしか居ないよ」
盛大に笑われてしまったが、実は心底ほっとしていた。さて、どんな言葉で応戦してやろうかと考えていると、3人は嬉しそうな声で私に告げる。
「見ていてね。1番近くで」
「俺達のプロデューサーを、また選んでくれたこと。絶対に後悔させないよ」
「最高の景色を見せてやる。この間よりも、もっと凄い景色を。それで、誰に訊いてもTRIGGERが最強だって答えるようになる。そんな世界を俺達が作ってみせるから」
だから、これからもよろしく。
3人は、最後にこう声を揃えた。
それに対する私の返答など、もう決まりきっていた。
TRIGGERが、世界で最強のアイドルになる。
それこそが、私の新しい夢だ。
引き金をひいたのは
終