第15章 俺…もしかしたら…、ホモなのかもしれない!
「うん、美味しい」
トマトの酸味が、消えていた食欲を刺激してくれるようだった。
『私も食欲が無い時は、マスターにお願いするんですよ。あ、パンを浸して食べても美味しいですよ。頼みましょうか』
春人が、明らかにいつもよりも優しい。優しくされる事に嬉しさを感じる反面、物悲しくもなる。
何故なら、彼が俺に優しくする理由など 1つしかないから。
「君が、俺に優しくするのは…。俺がTRIGGERの十龍之介だからだよ な」
きっと俺がTRIGGERでなければ、春人はこんなふうに世話を焼いたりしない。
彼がプロデューサー。俺がアイドル。この関係性により、成り立っているに過ぎないのだ。
決まり切った事を、あえて言葉にしただけなのに。胸が締め付けられた。
そして、言った事を後悔した。
春人が、俺よりも傷付いたような表情をしていたから。
「!
ごめん。はは、何言ってるんだろうな俺。今のは忘れ」
『そうですよ』
顔を上げると、もう傷付いた彼はいなかった。もしかすると、そんなふうに見えたのは俺の見間違いだったのかもしれない。
そう思わされるほど、今の春人の顔は冷徹冷酷そのものだった。
まるで、
こちらが本当の私ですよ。勘違いしないで下さい。
そう 言っているかのよう。
『その通りです。貴方がTRIGGERの十龍之介として しっかりと機能してくれないと困るんです。
だから、話してくれませんか。貴方が今、何に苦しんでいるのか』
あぁ、目が合っただけで 体に電気が走るみたいだ。
彼は…気が付いていたのか。俺の胸中に。
それは、さぞ気持ちが悪かっただろう。
同性である俺が、自分を見て胸を高鳴らせているなど。知りたくもなかっただろうに。
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