第2章 …なぁ。俺達、どこかで会ったか?
「あんたが探してるの、これでしょ」はい
『!!これ…、そう!これです』
ドサ。と彼は抱えた物を、全て私の手に委ねた。
今までTRIGGERが出した全てのCD、DVD。それだけに留まらず、出版された雑誌。インタビュー記録。さらには出演番組。ここにはその全てが揃っている。
「あなたなら、それに目を通してから曲作るだろうと思って」
『…姉鷺さん、かなり助かりました。ありがとうございます』
「あとこれ、待たせたわね」
頭の上に、ポン。と何か置かれた。
私は両手に抱えた資料を空いている棚に移してから、頭の上に手を伸ばす。
『…私の、名刺…』
“ 芸能プロダクション 八乙女事務所
TRIGGER専属プロデューサー 中崎春人 ”
そこにはこう記されていた。
なんだかこの文字を読むと、もう後戻りは出来ないのだと 身が引き締まる思いがした。
「頑張ってよね。プロデューサー!
なんか、あまりあの子達と上手くいってないみたいだけど」
『見てたんなら助けて下さいよ…』
「絶対いや」
ラックに背中を預けて、姉鷺は満面の笑みで言ってのけた。
『………どうしてですか』
「…信頼関係なんてのは、周りがとやかく言ったって築けるもんじゃないのよ。
自分自身の行動と実力で勝ち取りなさい。壁を乗り越えてこそ、屈強な関係が出来上がるんだから」
『…まぁ、そうですね』
たしかに 期間限定の関係であろうと、信頼は絶対に獲得しなければならない。
彼らが、何の迷いも無く 私の指示で動いてくれるように。
『それにしても…姉鷺さんの凄さが身に沁みましたよ。
よくあのメンバーとやって来れましたね』十さんはともかくとして
「あら。あれでも丸くなった方よ?
それに、心の距離がもうちょっと近付けば、とても可愛い子達なんだから」
……心の距離。ねぇ。
果たして私には、彼らと距離とやらを近付ける必要があるのだろうか。