• テキストサイズ

引き金をひいたのは【アイナナ夢】

第116章 心、重ねて




『まったく。何て馬鹿な真似をするんですか』

「プロデューサーの言う通り。千さんに対抗して、あんなモノマネをするなんて信じられな」

『私があんな馬鹿みたいに “ぐぅ” などという寝息を立てるはずないでしょう』

「え?そこなんだ」


天と私は、顔を見合わせる。


「いや、お前わりと言うぞ。ぐぅって」

『嘘でしょう?』

「春人くん。えっと、残念だけど…わりと言ってる」

『えぇー…』


龍之介と楽の顔を交互に見て、落胆の声を漏らした。そんな私の声を上から消すように、また部屋の扉が叩かれる。今までで1番、淑やかなノックだ。


「そろそろ時間よ。袖に集まってちょうだい」


そう、姉鷺はいつになく深い声で告げた。TRIGGERの3人がそれに対ししっかり頷くと、また感慨深い声をこぼす。


「いよいよ、なのね…」

「なんだ姉鷺、泣いてんのか?意外と可愛いとこあるじゃねえか」

「褒めてもらえて光栄だけど、泣いてないわよ。今のところはね」


言いつつも、ただ…と言葉を続ける。


「遂にここまで来たんだって思うと、やっぱり心に来るものがあるのよ」

「姉鷺さん…」


姉鷺の感動に呼応するように、龍之介も熱く胸を震わせているようだ。そんな2人を、リーダーである楽が笑顔で鼓舞する。そして、天が彼らに歩み寄った。


「姉鷺さん。ボク達の終着点はここじゃない。確かに今日はターニングポイントではありますけど。TRIGGERは、もっと、もっと先に進んで行きますから。これからも、どうかボク達を支えてください。よろしくお願いします」


その言葉に、姉鷺は遂に落涙した。震える背中に、3人が優しく手を添え包み込む。
私は彼らには近付かず、少し離れた場所からその光景を見つめていた。油断をすると、私まで涙をもらってしまいそうだったから。

/ 2933ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp