第116章 心、重ねて
「前にも言ったと思うけど、春人くんはあの子達に凄く愛されてるよね!」
『前にも言ったと思いますけど、さっきのやり取りを見て龍はよくそう思えますね?』
ずっと手に持っていたサボテンを置いた。それと同時に、またもこの部屋にノックの音が鳴る。今までの流れからして、今度の来訪者もおおよその予想が付いているのだが。
「はい!毎度お馴染み!」
「Re:valeの、楽屋訪問の時間だよ」
思っていた顔触れに、私達は揃って破顔した。
「ありゃ?なんだかオレ達が来ること分かってたみたいな雰囲気ですな!」
「え?そうなの?」
本番までそう時間がないタイミングで現れれば、私達が驚くと踏んでいたのだろう。しかしそう上手く事が運ばず、2人は拍子抜けといった様子であった。
『実はさきほどまでŹOOĻが。そしてその前はIDOLiSH7がいたんですよ。しかも、私にそれは素敵なプレゼントを携えて』
私は冗談交じりに右手を上向けて差し出してみる。すると百が、大袈裟に頭を抱えた。
「モモちゃんなんたる失態!!差し入れのお菓子もジュースも、全部まとめてケータリングにおいてきちゃったよ!」
「でも、1番先輩である僕達だけ手ぶらなんて格好付かないよね。だから、こんなのはどう?」
千は含みを持たせた笑みを浮かべると、唐突に私の腕を引いた。ぐらりと体勢が傾いた隙に、ちゅっと柔らかな感触が頬へと落とされる。
声にならない叫び声は3つ。楽と龍之介と、そして百である。そして天の小さな溜息と、千の堪えきれなかった笑い声が後を追った。