第116章 心、重ねて
「あのさ…」
気まずそうに口を開いたのは、トウマだ。私が首をかしげると、彼は衝撃的な言葉を口にする。
「それ、偽物だから」
『は?』
「なんだ。もうネタバラシか、トウマ」
「だってよ…。可哀想だろ。また必要のない水とかやって、ウッキーくんって呼びかけたりすんの」
「そうですか?私は、非常に切な可愛いと思いますが」
「切な可愛いってなんだよ!!」
私は、再び手にしていたサボテンを凝視する。すると、悠が呆れ声を上げた。
「虎於のやつ、それ作る為に馬鹿みたいに金かけてんの。特注だって。馬鹿みたいじゃね?」
『馬鹿みたい』
「てかさ!なんで虎於と巳波って、こいつに意地悪なことばっかすんの?」
「「愛してるから」」
「即答引くわ…。でも好きなら普通、困った顔より喜んだときの顔の方が見たくない?」
悠の方が、この2人よりよほど大人なのではないだろうか。と、思うことがある。
「あら。彼女の泣きそうな顔ですとか、悲しそうなお顔も魅力的だと思いません?」
「それに喜んだ顔なら、夜にいくらでも見れるだろ?なぁ。あんたが望むなら、俺が好きなだけ悦ばせてや」
「なんで夜限定なわけ?」
悠の素朴な疑問に、答えられる者などいない。この純粋な瞳に、誰が本当のことなど言えようか。なんとも言えない沈黙が部屋を包む。
「え、っと…。あの、そろそろ俺達、自分の楽屋に戻りま」
「ねえ。なんで昼はダメ?」
「あー…まぁ、昼でも全然ありだと思うぜ俺は」
「それでは私達はこれで。ライブ、精一杯やり切りましょうね。では、失礼いたします」
4人は、そんな調子で帰って行った。最後までマイペースな彼らであったが、巳波の残した言葉。
“精一杯やり切ろう” そんな言葉が、ŹOOĻの口から出た来たことが堪らなく嬉しい。どうやらそれは、TRIGGERも同じなようで。苦笑いの中にも、喜びが隠れているような気がした。