第116章 心、重ねて
「泣きやんだ?」
『泣いてませんしね』
IDOLiSH7が姿を消した後、着替えた私に天が言った。そっと白いピアノに手をやって、まぁ泣きそうにはなりましたけど。と言葉を続ける。
そうこうしていると、またも来客である。お次のお客様は4人組。
遠慮がちに入室した彼らは、なんとさきほどまでここにいたIDOLiSH7と同じ言葉を口にする。
「お前にやりたいもんがあってな」
『え、私ですか?』
虎於に手渡されたのは、高さが15センチほどある縦長の立方体。さぁ今すぐに開けろと彼の目が言っていたので、お礼を言ってから黒いリボンを解く。
「お気を付けて。急に開いては、噛み付かれるかもしれませんよ?」
『またそういう冗談を…』
龍之介に椅子を勧められ、腰を下ろした巳波が遠くから告げた。
「プロデューサー?中身はなんだったの?」
『え、あぁ。中身は…
サボテン、ですね』
何故サボテンなのかと、くれた本人に目線で問うた。すると虎於はすぐに説明をくれる。
「この間、あんたが長らく可愛がっていたサボテンが偽物だと知って悲しんでたろ。だから、今度は本物を用意してやった」
「その子、上手く育てれば花も咲くらしいですよ。こちらの飼育本もセットにしておきますので、頑張って綺麗なお花を咲かせてくださいね」
私は最後まで2人の言葉を聞いてから、改めてじぃっとサボテンを見つめる。
『ふむ…。この体全体を覆った産毛に、先端までピンと尖った棘。どうやら、今度は本当に本物ですね。
ありがとうございます。本を熟読して、大切に育てますね』
「ふふ。花が咲いたら、ぜひ私にも見せてくださいね」
「名前を付けて、たまに呼んでやると良いらしいぞ。どんな名前にする?」
『そうですね。ウッキーくんとか、どうでしょう?』
「まぁ…いいんじゃないか?」
虎於は、視線を斜め上に逃がした。