第116章 心、重ねて
私にだけ秘密なままなのは非常に遺憾であるが、確かにいつまでもヘソを曲げていても仕方がない。プレゼントの中身ならば、ライブが終わってからSNS等で話題になるだろう。それまではもう中身を気にするのはやめよう。
そう私が決意した時、TRIGGERの控え室に7人の客が現れた。
リーダーである大和が、バタバタしてるだろうタイミングでごめんと述べてから、来訪理由を告げる。
「実は、俺達からあんたに渡したいもんがあってさ」
『私に?』
「そう!ほら環、早く渡してやんな」
三月にそう促され、環は私の前に歩み出た。そして手にしていた包みを遠慮がちに差し出す。
白い包装紙に、ブルーのリボン。私はそれを受け取ると、環に開けても良いかと問い掛ける。彼がこくんと頷いたのを確認してから、リボンを引いた。
「実は、環くんがデザインしたんです」
「タマキの精一杯の想い、どうか受け取ってあげてください」
壮五とナギの言葉を受け、首を縦に動かしてから包みを開いた。
中身は、Tシャツであった。このライブのラストソングの際に、彼らが身に付けるのと同じデザイン。これらには、各々のメンバーの好物やモチーフがアクセントとしてプリントされている。大和なら眼鏡、環ならプリンといったデザインだ。
私に贈られたTシャツに施されていたワンポイントは…白いピアノであった。
『………』
「え、なんで黙んの?もしかして、嫌だった?やっぱマイクとか、花とかの方が良かった?なんか、ごめん…。でもあんたには、やっぱピアノが似合うと思った、から」
『嬉しい…』
「ほんとに?」
『皆んなとお揃いのTシャツ、嬉しい…!タマちゃんが、私の為にピアノを選んでくれて…嬉しい。ありがとう…!』
「そ、っか。良かった。
俺さ、えりりんのピアノ、初めて聴いたときのこと今でもすげぇ覚えてる。思い出すと、胸がポカポカってなる。
今でも、大好きだから。あんたのピアノ。これからもずっと、大好きだから」
環は頬を少しだけ赤らめて、こちらまで笑顔になってしまいそうな微笑みを見せた。