第116章 心、重ねて
「とは言っても、期日守れなかった僕に責任があるし。ここで我儘を通すほど子供じゃない。そうだね…
今ここでエリちゃんが僕の膝に乗ってキスをして、ありったけの愛の言葉をくれるって言うなら共作ってことにしてもいい」
『なるほど。楽、ちょっとの間だけあっち向いて耳塞いでてもらえます?』
「待て待て待て。俺が大人しく従うと思うのか?」
「冗談だから!!ユキのちょっとしたイケてるジョークだから!楽はその固めた握り拳開いて!春人ちゃんも今すぐユキの膝から降りてえ!!」
私と千は、そうそう冗談冗談と口を揃える。百は、眉を八の字にして力なく笑っていた。部屋で唯一笑っていない楽は、このノリには付いていけないと溜め息を吐くのだった。
さて。時間は有限である。いい加減に問題解決の為に動くとしよう。
私が知り得ている情報では、Re:vale用の楽曲は既にあがっており、残すは16人用の物のみ。
乗り気でない千をなんとか宥めすかし、作成中のデモを聴かせてもらう運びとなる。進捗が全くのゼロでなかったことに、私は密かに安堵した。
「仮で、僕と百の声を当ててみたんだけど。なんか、ちぐはぐなんだよね」
『……譜面あります?』
「うん」
『譜並びも問題なさそうなのに…』
「でしょ?ハモる上で全く問題なさそうなのに」
『何なんでしょうね。不協和音?』
「ちぐはぐしてる」
私と千がデモを聴いている後ろで、百と楽もまた耳を澄ませていた。
『ハモるのやめましょうよ』
「それは駄目だな」
『どうして?』
「ここはハモると決まってる」
『決まってる?誰が決めたの』
「僕が」
『千…』
「悪いけど、譲れない」
『そういうこと言う時は、悪いと思ってる顔してくれるかなぁ』