第116章 心、重ねて
『はい。Re:vale様、完全復活ということで。そろそろ本題に入らせていただいても?』
「…嫌だなあ」
『ゆ〜き〜〜ぃ?』
「分かってるよ。僕が納期を守れなかったせいで、皆んなに迷惑かけてる自覚はあるし、悪いとも思ってる。でも、君にも分かるだろう?自分の納得がいってない、雑に作った曲を上げたくないんだ」
分かっている。千に無理を強いているのは。
今回のライブにあたり、各グループは新曲お披露目を行う。それはRe:valeも同じである。それに加え、4グループ合同で歌う新しい楽曲の作成も千が担当するのだ。
つまり彼に与えられた責務は “1週間で2曲を作り上げろ” というもの。
更に過酷なのは、他のアイドル同様 山ほどのレッスンが彼にも課せられるということ。
『完璧な曲以外を世に出したくない気持ちも、ありえないぐらいキツイのも、私分かるよ。だって千は…作曲家でもあって、アイドルでもあるから』
「君も、かつてはそうだったもんね」
『…その二役を熟すのに、どれほどタフでいなきゃいけないか。分かるなんて言いながら、その苦労は想像を絶するけどね』
「そんな瞳を、僕に向けるなよ。嫉妬してるのがバレバレだ」
『ふふ、やっぱりバレるか。うん。妬んではないけど、羨みはしてるよ。
ねぇ千。そんな貴方を羨む、元アイドルである私からのお願い。
曲作り、手伝わせてよ』
「断る」
『でしょうね!!』
あわよくば流されてくれないかと思ったのだが、やはり無理だった。もしも私が千の立場なら、同じ返答をしただろう。
自分の作品に手を触れていいのは自分だけ。彼の目はそう告げていた。