第116章 心、重ねて
ŹOOĻに勢いがある時は、それを押し留めることは困難だ。だが、いつまでもこうして流されてやるわけにはいかない。
それよりも、と私は本題を切り出した。本題とは勿論、彼らに任せたライブ演出の件である。悠は眩しい笑顔で、私の前に資料を広げて見せた。
「これ、オレが考えたヤツ!めっちゃイイから、ちゃんと見ろよな!」
『はい』
それは、IDOLiSH7がコーヒーカップに乗りながら歌う演出らしい。
他にも、客席に虹の映像を投影するもの。まるで本物のようにリアルな溶岩が、ステージを埋め尽くしていくプロジェクションマッピングなど、こだわりの演出が盛りだくさんであった。
褒め言葉を期待してか、悠の眼差しはキラキラと私に突き刺さる。
『こんな素晴らしい演出が散りばめられたライブ、楽しくないはずがないですよね』
「だろ!!」
『まぁ…後の問題は、予算や会場との兼ね合いですか』
「それは、オレの仕事じゃない!」
『ごもっともで』
実は、士郎の方でもう交渉に入っている。秘密裏にこの資料を見せられた段階で、私が彼にゴーサインを出したのだ。その時 士郎は、ŹOOĻをそれはそれは自慢気に褒めていた。
私は、彼と4人の関係が上手くいっているのだと悟り心底嬉しくなったのだった。
「…ライブ作りに携われるの、楽しいよね」
龍之介は、優しく瞳を細め言った。すると、ŹOOĻは互いに顔を見合わせる。代表して、トウマが頬を人差し指でかきながら答える。
「はい…!応援してくれる皆んなが、俺達の考えた演出を観た時にどんな反応してくれるのかって考えたら、なんていうか…たまんないっスよね。
ものすごい、楽しいです。ファンが喜んでくれること考えるのって!」
トウマの心からの笑顔とその言葉を前に、私と龍之介はしっかりと頷いた。
大切なものを奪ってしまったŹOOĻだが、これから先いくらでも何かを生み出すことが出来るのだ。