第116章 心、重ねて
「私達がプレゼントした、プラスチック製のサボテン。あれを本物だと信じ込んで、霧吹きで水をあげて大切に育てていましたよね。そういう天然ボケなところが、とても愛くるしいと感じました」
「え、あー…オ、オレは、変な気をつかって適当な嘘とか言わないとこが…まぁ、悪くないと思うけど。で、でもべつにめっちゃ好きってわけでもないからな!」
「あんた、ハーフグローブをエロ手袋って呼んでるだろう。エロって単語がおまえの口から出ると、興奮する」
「次は俺の番か…!えっと、どこからでも手で切れますって書いてある袋あるだろ?あんた、アレのこと信用してないよな。絶対にハサミを使って切るもんな!そういうとこ、ピンポイントで俺と似ててちょっと嬉しかったり…」
私を待ち構えていた4人は、順番にそう言った。
『いや、何ですかこれ』
「おいおい。分からねぇのか?あんたを全力で口説いてんだろう」
『口説かれてたんですか!?』
「えぇ。あなたをŹOOĻの虜にしてやろうと、それはもう懸命に作戦を考えたんですよ?」
『さ、作戦?』
「提案してくれたのは、宇都木さんなんだけどな。相手に好きになって貰うには、ストレートにそいつの好きな所を素直に伝えてみたらどうだって」
「オレは仕方なく付き合っただけだけど!?でも…どうだった?ちょっとはオレらのとこに来てもいいかなって思った?」
なるほど。彼らの思惑は分かった。しかし今は、そんなことよりもどうしても気になる事がある。
『……貴方達がくれたあのサボテン、偽物なんですか…?』
「悪いな。少し大きくなって来たかも、なんて嬉しそうに言うおまえを見たら、本当のことが言えなくてな」
「もしかしたら、花が咲くかも…とも仰っていましたよね」
私は羞恥から、わなわなと身体が震え出してしまう。悔し恥ずかしで、今もデスクに飾ってあるサボテンを思い浮かべた。それから、恐る恐る隣に立つ龍之介の顔を盗み見る。
彼は、懸命に笑いを堪えるので忙しそうであった。