第116章 心、重ねて
「あはははっ、なんだよもう!びっくりするだろ!?」
『仕事終えて帰宅したばかりの人間に、挨拶もなく御飯せびったりしませんよ』
事情を速やかに説明する。大らかな彼はこうして笑い飛ばしてくれたが、大和はその三月以上に笑っていた。
「すごいタイミングで帰って来るよね。和泉三月…」
「オレが1番びっくりだよ!にしても面白いなー、IDOLiSH8。なぁ、他には何かキャラねえの?」
『続けるのか…』
うーーんと、食いしん坊キャラを生み出した陸が唸った。やがて、あ!と人差し指を立てて言い放つ。
「よく漫画とかで、いつも “眠〜〜い” って言ってるキャラクターいない!?」
「……プロデューサー?べつにやらなくてもい」
『う〜〜…眠いよぉ…』
「なんでやるかな」
何故やるか。そんなのは決まっている。これが、乗りかかった船だからである。
『昨日は12時間しか、寝てないから…もう、眠くて眠くて…。もう駄目〜…お願い…誰か、膝枕してぇ』
「アナタの枕になれる幸運を、どうかワタシに。この膝で、最良の睡眠へと誘うことを約束いたしますよ?」
いつか間にか目の前に跪いていたナギを見て、驚きのあまり悲鳴を上げそうになってしまった。なんとかそれを思い留まらせてくれたのは、最後に帰宅したメンバーのクールな突っ込み。
「12時間睡眠にも関わらず、そこまで強い睡魔がこの時間に…?中崎さん。一度、きちんとした医者に罹られては?」
ナギの手を振り払うことも一織に説明をすることも、すぐには出来なかった。誰か助けてくれと視線を辺りに投げてみるも、どうやら彼らもそれどころではないらしい。笑いを堪えたり、むしろ我慢せず大声で笑い転げたりと大忙しだ。
とにかく。IDOLiSH7のメンバー達の元気な様子をこの目で見られたので、ここへ足を運んだ意味はあったといえよう。