第15章 俺…もしかしたら…、ホモなのかもしれない!
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無事に撮影が終了し、私達は一旦 事務所へと戻り。その後すぐに解散となった。
別の仕事をこなした天は、既に帰宅したようだ。
私は事務所を空けていた間に溜まった雑務を片付け終わると、龍之介の姿を探すのだった。
私が、彼を探す理由…。それは
『八乙女さん、お疲れ様です』
「…おう、お疲れ」
一瞬期待したが。ダンススタジオから出て来たのは、探している人物ではなかった。
自主練で汗を流したのであろう楽に声をかける。しかし、不自然に視線を ふい と逸らされる。少し不思議には感じたが、特に気に止めず話を続ける。
『?
すみません。十さんがどこにいるか知っていますか?』
「龍之介なら、さっきここを出」
『ありがとうございます』
私は最後まで聞かずに 身を翻し、龍之介を追い掛けるべくその場を去ろうと駆け出した。
「ちょ、待っ」
後ろを向いた私の後ろ襟ぐりを引っ掴む楽。
『ぐぇ』
喉が締まった私は、潰れたカエルのような声が出てしまう。
「あ、わり」
さすがに素直に謝る楽。そんな彼へ再び向き直り、私は視線を上げる。早く龍之介を追いかけないと間に合わない。そんな空気をありありと醸し出す。
「龍に…なんの用だ」
『別に…食事にでも誘おうと思っただけです』
「は?お前が…?龍を食事に、誘いだ!?」
楽の輪郭に雫が一筋伝う。それは明らかに運動後だから、という汗ではない。
何をそんなに焦っているのか、よく分からない。私からの誘いがそんなに珍しいのか?
………いや、珍しいか。
「俺も…なんか、すげー腹減った気がする」
複雑な様相で、自分も同行したいと暗に主張してくる楽。しかし…
『あ、今回は十さんと私の2人で行きます』キパ
私は、龍之介と話したい事があるのだ。
少し寂しそうな様子の彼に、すみません とだけ残して。私は彼の側から離れた。
「……食事の誘いなんざ、俺は一度も受けた事ねえぞ」おい
(そもそも、なんだ、この気持ちは…。どうして俺は、今こんなにもイライラしてんだ。意味が、分かんねえ)