第15章 俺…もしかしたら…、ホモなのかもしれない!
何考えてやがる。とか
馬鹿な事言うな。とか
正常な頭なら、そう思っただろう。
しかし その時の俺は、残念ながら正常じゃなかった。
今すぐそのワンピースを引き裂いて、その小さな唇に吸い付いて、その白い首筋に噛み付いてやりたい。
「……は、」
小さく息をついて。俺は片手で自重を支えて、もう片方の手を春人に向かって伸ばす。
「はい、オッケー!!」
カメラマンの声をきっかけに、我に返る。
「いいねぇ!凄く良い顔!さすがだよ八乙女くん!僕見ていてキュンとしちゃったよ」
気持ち悪く体をくねるカメラマン。
いつの間にか、撮影が終わっていた。シャツを持ってスタッフが駆け寄ってくる。それを受け取り素早く羽織ったタイミングで、春人が声をかけてきた。
『お疲れ様でした』
「あ、ああ」
待て…待て。俺は今…こいつ(男)に、なんつー感情をっ。
「楽っ!」キラキラ
いつの間にか近くにいた龍之介が、心の底から嬉しそうな表情を浮かべて 俺を見つめている。
…やめろ。その顔…
“ やった!楽も俺の仲間だ! ” みたいな顔!
でも…なるほどな。これで納得がいった。龍之介も、こいつに引き込まれたのだろう。さっきみたいな雰囲気を、あの見た目で醸し出されたら 飲み込まれてしまうのも頷ける。
少し離れた場所で、春人は真剣な顔でモニターを睨んでいる。俺もそれに倣う。
『…うん。良い表情…』
ベットの下の角度から撮られた写真には、ばっちり俺の顔が映し出されていた。ちょうど下から俺を見上げるようなアングルだ。
「……なぁ」
『はい?』
「これ、載せるのやめねぇか」
『…は?』
何を馬鹿な事を言っているのか。みたいな顔をした春人。だが俺は…
…情け無くて仕方がないのだ。
仮にも、抱かれたい男ランキング1位に選ばれた俺が…。男相手に、こんなにも欲情した顔を晒しているのが。
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