第115章 最高のアイドルを
そんな平和ムードの中。士郎が、あぁ!と納得した様子で手を打ち鳴らす。
「そういえば、2人はお付き合いをされているのでしたね」
『えっ』
誰からどんな内容を聞いたのかは明白である。士郎の隣にいるトウマと、さきほどから目が合わないのがその証拠だ。
それよりも、その他大勢のニマニマとした顔の方が気になった。
「あぁ。色々あったけど、今は恋人に」
『こ、ここはそんな話をする場ではないはずです!皆さん忙しいのにこうして集まっているんですから、もっと実のある話をしましょう!』
「へぇ。中崎さんは、照れるとそういう感じになるんですね。可愛いな…」
『かっ、』
「あぁ。可愛い」
入るための穴を掘る訳にもいかず、私はとりあえず手製の資料で赤くなった顔を隠した。
『はい。ここに用意したのは、バラエティでお馴染みのセンブリ茶です。悶絶級に苦いというのは有名ですが、ここにあるのは私のお手製。用法と容量をガン無視し、所定の10倍の濃さで煮出してあります。
次に関係のない話をしたり、私の話を遮った人には、容赦なく一気飲みを要求しますのでそのおつもりで』
誰しもが口を噤(つぐ)み、こくこくと首を動かしているのを見渡してから、私は満面の笑みで資料を開いた。
『それでは、会議を再開しましょうか』