第115章 最高のアイドルを
「まぁ、妥当なところだろうな」
宗助は ふふんと鼻を鳴らし、まるで自分が褒められたかのように自慢気だ。
『いや、しかし…そんな大役を、私が引き受けてしまって良いんでしょうか』
「春人くんが辞退するなら、俺が引き受けよう。そもそもフルフェスの企画案を出したのは、うちの所属タレントだ。それにそんな脚光を浴びるポジション、絶対に欲し…いっ、いたたた!ちょ、痛…っ、ご、ごめんなさい調子に乗りました!ちょっとしたジョークだから!だから、つねるのやめてっ」
眼鏡の兄弟がテーブルの下で、一体どのような攻防を繰り広げているのか想像に容易い。おそらく凛太朗の太腿には、後に大きな青タンが浮かび上がることだろう。
「誰も引き受けないって言うなら、これはもう僕がやるしかないね!間違いなく最高のイベントにしてあげるから、君らは宇宙船にでも乗った気でいれば良いさ。リモコンで動く最新型だよ?」
「それ、ただのドローンなのでは?」
士郎は真顔で突っ込んだ。
「というか、今回1番何もしてないうちに舵を切らせろってよく言えたな…」
「し、資金援助の割合で言えばうちが1番じゃないか」
「お金で大切なものを買おうとしていたら、友人失くすと思うけど。あ、元々いないんだった」
「つぎ僕に友達がいないって言ったら、今度は南極に飛ばしてやるからな」
「南極か…1度は行ってみたいかな。あ、皆さんへのお土産はペンギンのストラップで良いですか?」
左遷の末に手に入れた可愛らしいストラップを、我々は果たしてどんな気持ちでどこに飾れば良いというのだろうか。