第15章 俺…もしかしたら…、ホモなのかもしれない!
『今は、私の事を女だと思って下さい』
な、…なんだよ。そういう事かよ。今のはびっくりさせられた。まぁ当然だと思う。俺は、いま自分が組み敷いている女が、愛おしくて。欲しくて欲しくて堪らないという表情をしなくてはいけないのだ。
それが、この写真のコンセプトなのだから。
『貴方が十さんのように、役に入り込めるよう…私も協力しましょう』
俺が口角を上げると、シャッターを切る音が耳に入る。しかしながら、当然この程度ではオッケーの声は掛からない。
「へぇ。お前が?面白いな」
いつも俺達の予想の斜め上をいく こいつが、今度は何をしてくれるのか興味があった。
「何が出来るのか知らねえけど やってみ」
俺がまだ喋っている途中だと言うのに、もう春人は動き出した。
するりと白い腕が伸びてきて、俺の脇を通り抜け。背中へと回される。そして、背中を つぅと長い指が滑る。
『 楽… 楽…、』
「っ、な…」
潤んだ瞳が、とんでもない攻撃力を持って俺の胸を鷲掴む。なんで…そんなに物欲しげな目が出来るんだ。人を惑わせ魅了する、その視線は一体なんだ。
どうして男のお前が、そんな表情を作る事が出来る!?
そしてルージュが塗られたセクシーな唇で また、俺の名を紡ぐ。
『…楽』
その口元から発せられる1音1音が、耳をくすぐり 心臓に突き刺さる。
どうやら 名前の後に、何か言葉を続けようとしている様子だ。なんだ?何を伝えようとしている?
俺は春人の唇に視線が釘付けになる。
『………』
“ 好 き ”
声として発せられはしなかったが、唇はたしかに そう動いていた。