第115章 最高のアイドルを
「それで。交渉の方はどうなったんだ?勿論、八乙女パパを説得して来たんだろう?」
「う…っ」
千の視線は、まるで見えない矢のように凛太朗に突き刺さる。彼は心臓を押さえ、呻き声を出しながら たたらを踏んだ。
「自分の責務も果たせなかったのか。社長が聞いて呆れるな」
「ねぇ千。君はどうしてそんなに冷たいのかな」
「安心しろ。僕が冷たく当たるのはお前だけだ」
「あそうなの?それは安心した。ってならないよ!優しくしてよ!」
千と凛太朗が言い合いをしていると、百がようやく間に入る。
「ユキ、仕方ないよ。八乙女プロが1番の難所だってことは、最初から分かってたし…。IDOLiSH7とŹOOĻにオッケー貰えただけで、とりあえず上々でしょ!」
どうやら、彼らは三手に分かれていたらしい。百がツクモへ。千が小鳥遊へ出向き、それぞれフルフェスの参加を打診して承諾を得たとのこと。
しかしながら、凛太朗が担当した八乙女プロだけは敢え無く撃沈したのだった。
「俺だって、ただでやられて引き返して来たわけじゃないさ。交換条件くらい勝ち取って来てる」
「うっそマジで!?さすが敏腕社長!」
「へぇ、やるじゃない。それで?どんな条件なら、八乙女様はこの船に乗ってくれるんだ?」
期待の眼差しから逃げるようにして、凛太朗は流れる雲を見つめながら小声で告げる。
「……武道館で、開催するなら…TRIGGERの参加を許可してくれるって」
場に悲しい沈黙が募った。その空気に耐えられなくなった凛太朗自らが、再び口を開く。
「イ、イージーでしょっ?」
「どこが!?スーパーミラクルウルトラハイパーハードだよ!!」