第115章 最高のアイドルを
「確かに、客は集まるでしょう。その16人が揃っていて、注目を浴びないわけがない」
「だったら何も問題ないのでは?」
「いや、問題はある。その客の集め方、注目のあり方は、うちの本意じゃありません」
社長がこう出るのは予想の範疇だったのだろう。凛太朗は、余裕の笑みでなるほどと呟く。
「つまりは、こういうことですか?おたくのTRIGGERさんだけで、フルフェスと同じくらい集客が出来るようにならないと意味がない。他の3グループと協力して何かを成したとしても意味がない、と?」
宗助は何も言わず静かに目を閉じて、ソファに背を沈めた。それは、肯定を意味している。
「勝気なのも良いことですが、少しはアイドル業界の為に動かれてみては?彼らのファンは、こんなビックイベントを夢見ていると思いませんか?」
「くどいですな。こちらの意向は変わりません。どうぞ、残りの3グループでお好きになさってください」
そう。八乙女社長は、元々TRIGGERが他のグループと馴れ合うのを良しとしていない。経営者としてシビアな志向の持ち主である彼は、TRIGGERの一人勝ちを常に目論んでいる。これまでは、そんな彼に私が無理な理屈を押し付けて、コラボ企画を行ってきたに過ぎないのだ。
ただ、今回はさすがにその手は通じないだろう。ラビチューブで共演したり、深夜枠のテレビで対談するレベルの話ではない。規模が大き過ぎる。
私が1人考えを巡らせていると、凛太朗の視線がきらりとこちらに向けられた。
「彼女を責める気は毛頭ないですが この企画は、元アイドルLioが濁らせてしまったアイドル業界のイメージ払拭の為でもあるんですけどね」
この男は、私までもを交渉材料に用いた。