第114章 それは決して遠くない未来②
「はは!やったな!そうか、父親か…!ありがとうな、エリ。あんたのおかげで、俺は父親になれる。3人目の家族…。すげぇよ、めちゃくちゃ嬉しい」
『そ、っか…。うん、楽が喜んでくれて良かった』
「…エリは、嬉しくないのか?」
真剣な瞳で覗き込まれて、胸の中心がドクンと脈を打つ。でも、何を打ち明けても彼は真っ直ぐに受け止めてくれる。そう信頼しているから、私はいつだって本心をぶつけることが出来るのだ。
『嬉しくない、わけじゃないの。でも正直、私は自信がない。仕事しかしてこなかった私が、良い母親になれるのかな。生まれてくる子供を、幸せにしてあげられるのかなって…少し、怖い』
「ずっとさ、夢だったんだ」
『え?』
「仲の良い、家族ってやつ。家はいつも笑顔で溢れてて、互いが互いをいつだって想って愛してて。飯を食い終わっても、皆んながずっとリビングに留まってる みたいな家族を築くのが」
顔をくしゃっとして、少年みたいに楽は笑う。初めて聞く、彼の理想の家族像。それはとても楽らしい、温かで幸せな夢。
「エリが不安になるのも、理解出来るつもりだ。でもあんたは、いつだって完璧を求め過ぎてる。
あのな、べつに完璧じゃなくてもいいんだよ。初めから、完璧な親なんかいねえだろ?大事なのは、完璧じゃねえ。俺とエリが、生まれてくる子を心から愛してやることじゃないかと、俺は思うけどな」
『楽……。うん、そう だよね』
彼の前向きな姿勢には、いつも励まされ支えられてきた。
山や谷がなかったわけではない。それでも2人がここまで歩いてこられたのは、間違いなく楽のこういう眩しさに引っ張ってもらったおかげだ。私の不安を払拭してくれる楽には、感謝しても仕切れない。