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引き金をひいたのは【アイナナ夢】

第113章 もう一生、離さない




「あんたの行動力には、本当に驚かされてばかりだ」

『あはは…ごめんね、私の奇行のせいでいつも迷惑かけちゃって』


楽は、ゆっくりと首を左右に動かした。


「いや、エリが言うその奇行には大抵、意味があるだろ。
天が足をやった時も、あんたはスタッフ全員の反対を押し切ってアンコールを強行した。そうすることで、天のプライドを守ったんだ。
龍が雪山で消えた時も、エリは迷うことなく吹雪の中飛び出して行って、龍の命を守った。
そして、俺を守る為に銃を持った男の前に飛び出した…

そう。あんたが突飛な行動を起こすのはいつだって、TRIGGERを守る為だ。そのことに俺は、ずっと感謝してた。今までは」


寄せては返す優しい波の音が、囁くように耳を撫でる。そんな波音の中で、楽の声は低く甘く私に届いていた。


『今までは?』

「あぁ。もう御免だ。あんたの背中を見送るのは。
一寸先が見えない暗闇の中へでも、肌を刺すような冷たい水の中へでも、これからは俺が先に行く。そして、エリの手を引くから」


楽がまた、ひとつ私の名前を呼ぶ。そして、闇の中こちらに手を差し伸べた。


「だから、ずっと俺について来てくれるか?」


私の体は、強い引力に導かれるように海の方へと向かう。まるで、運命の糸に手繰り寄せられるみたいに。


『ひとつだけ、条件がある。
何があっても、私のことを手離さないで』

「あのな…手離す選択肢なんてもん、言われなくても最初からないぜ。
天みたいに気持ちを押し殺すことも、龍みたいに身を引くことも俺には出来ないからな」


顔を上げれば、すぐそこに楽の強い眼差しがあった。その瞳の中に、私は確かに永遠を見た。
ふっと目を細めれば、楽は私の腰の後ろに手を回す。至近距離で見つめ合った後に、ようやく私は固めた覚悟を言葉にする。


『いる。私、これからずっと、楽といる』

「ありがとう。俺を選んだこと、絶対に後悔させないから」


星が降りそうな夜の海で、私達は約束のキスを交わした。

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