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引き金をひいたのは【アイナナ夢】

第113章 もう一生、離さない




私はエリの姿になって、薄暗い駐車場で楽を待った。この姿で楽と2人でいるところを写真にでも撮られたら…と、思わないでもなかったが。彼もその辺は理解しているはずだ。まぁ時間も時間なので、そこまで神経質にならなくても良いかもしれない。でもやはり、人の多いところは避けた方が無難だろう。


『…避けてくれる、よね。多分』


信じたい気持ちは山々だが、楽のことだ。過度な期待はしない方が良いかもしれない。


「悪い。待たせちまった」

『ううん、大丈夫だよ。ほぼ1時間』


私の目の前に、愛車に乗って楽は現れた。運転席から出て来た彼は、スーツに身を包んでいる。見慣れているはずの華々しい衣装姿より、何倍も眩しかった。


「俺の車で移動するのは…さすがにまずいか」

『あ、良かった。そういうのちゃんと考えてくれてたんだ』


その時、きらりと光る何かが楽 目掛けて飛んでくる。反射的にキャッチした彼の手の中で、それはチャリっと音を立てた。
飛んで来たのは車のキーで、それを投げたのは八乙女宗助である。


「特別に私の車を貸してやる。お前のはマスコミにナンバーが割れているだろう」

「…はは。有り難く使わせてもらうよ」

「擦り傷でも付けたら許さんからな」

「付けるかよ。もしそんなことになったら、その時は新車買って返してやるぜ」


もう社内へと戻り始めている社長の背中に、楽は告げた。
それから、助手席のドアを開いて私に座るよう勧める。こんなベタなエスコートでさえ様になるのだから、やっぱり彼は狡いと思う。

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