第112章 幸せでいて
私達は揃って、事務所へと帰って来た。もう時間も遅い為、なるべく早く彼らを帰宅させてあげたい気持ちは山々だ。しかし、そうはいかないことを3人も分かっているらしい。この後の身の振り方を考えて、難しい顔のTRIGGERメンバー。私はその中の1人、楽の腕を軽く引く。
『楽には、これから社長室に付き合ってもらいたいのですが』
「親父のところに?」
『はい。早目に挨拶をしておきたくて』
「挨拶…。あぁそういや あんたの携帯、新幹線の中でも鳴りっぱなしだったよな。どうせ、全部 親父と姉鷺辺りだろ。悪いな、俺のせいでお前まで雷を食らうことになっちまって」
『え?いや、それは全然構いませんよ。雷には撃たれ慣れていますから』
「んなものに慣れるなよ。これからは俺が、あんたを雷から守ってやる」
本気なのか冗談なのか、私の肩に手を置いて優しく微笑んだ。白く光る歯がなんとも眩しい。
「ボクらも付き合うよ。そこの避雷針だけじゃ頼りないし」
「おい。今なんつった?天」
「心配だから自分も付いていくって天は言いたかったんだよ!な?天」
「なんだよ。龍も俺だけじゃこいつを守り切れないって思ってるのか?」
「まさか!楽はこの世で1番強くてカッコ良い避雷針だよ!!」
「おう、分かってくれてるならいい」
世界一強くて格好良い避雷針は、果たして褒め言葉なのだろうか。まぁ言われた本人がご満悦のようなので、問題はないのだろうが。
そして結局、私と楽は2人で社長室へ向かうことにした。天と龍之介とはこの場で別れ、私達は足並みを揃えて雷雲が立ち込めているであろう場所へと向かった。