第112章 幸せでいて
「あっ、他にも候補者がいるみたいだよ。
第2候補は…ダンサーのMAKAさんだって!」
「彼女がロスで行ったイベントに、楽がサプライズゲストとしてステージに立ったことが理由。だってさ、楽」
「だってさ、じゃねえよ。なんだその雑な理由は。大体な、あいつにはボブっていう立派な恋人がいるんだ」
「彼、そんな名前だった?」
「それにボブのことがなくたってな、俺とあいつはただのダチだ。それ以上でもそれ以下でもねえ。やましいことなんか、これっぽっちもねえんだよ。
エリ…じゃなかった。春人。そういうわけだから誤解するなよ?」
『………あ、ごめんなさい。何でしょう』
「いや…べつに。あんたが変な誤解してなけりゃ、いい」
楽はそう言って、少し不服そうに顔を横向けた。
「珍しいね。こういう情報収集は、むしろキミの十八番でしょ。それなのに、携帯もパソコンも開かないでさっきから難しい顔してる」
『すみません。ずっと考えていたんですよ。今の事態を1番平和的に収めるには、どういう行動を取るべきなのか』
「そうだったのか!具合でも悪いんじゃないかって心配しちゃったよ。
それで、答えは出そう?」
『おかげさまで』
私は、隣に座る楽の方を見て告げる。
『楽。私達、結婚しましょう』
天と龍之介は、勢い良く同じタイミングで立ち上がる。そして楽は、愉快そうに笑った。
「ははっ、いいなそれ。最高に幸せだし、面白いよ」
『そうですか。良かったです』
「な…」
(何が良かったのか、全然分からないのはボクだけ?)
「びっ…」
(びっくりした…!なんて心臓に悪い冗談なんだ!)