第15章 俺…もしかしたら…、ホモなのかもしれない!
【side 十龍之介】
仕事だから選り好みはしないけど、女性と絡みのある撮影は苦手だった。
必死で周りを騙さなければいけないからだ。女性の扱いに慣れている十龍之介を。セクシーでエロい十龍之介を。
だから、正直 今日は助かった。モデルの女性が相手より、見知った仲の春人の方が 緊張しないに決まっている。
「よろしくな、春人くん」
『こちらこそ。良い表情を期待していますよ』
相変わらず、挑発的に俺を見上げてくる この瞳。俺は彼のこの顔が嫌いじゃない。
彼が期待してくれる以上の成果を、必ず上げてやると気合も入る。
「じゃあ撮影 再開しまーす!お願いします」
スタッフの声と同時に、俺達はセットの前に移動する。ヨーロッパの街並みが再現されたセットの前に2人して立つ。
俺と彼の身長差を付けるため、俺はシークレットブーツを履いている。なので春人との身長差は15センチ以上だ。
こうやって見下ろしていると…本当に女の子みたい。ふわりとした白いワンピースから覗く手足は白くて細い。作り物とは思えない、膨よかな胸…。
こんなに近くで見つめていると、新たな発見がいくつもある。
彼が目を伏せると、長い睫毛が影を作る事。唇は全く荒れていなくてふっくらツヤツヤな事。本当の女の子みたいに、甘い匂いがする事…。
その白い肩にそっと手を添えると、それはとても温かい…。
と、同時に自分の手が凄く冷え切っている事に気付いてしまう。
「…っ、」
(なんで…俺、春人くん相手に こんなにも緊張してるんだ!?)