第112章 幸せでいて
セットリスト3曲とアンコールを終えたTRIGGERは、私の待つテントへと帰ってくる。天と龍之介の顔はこわばっていたが、楽はいつもと同じに見えた。それが余計に、私の腹を立てる要因になった。
ここのスタッフでさえ、さきほどの珍事に動揺しているというのに。私達4人の顔色を窺い、スタッフはビクビクしながら問い掛ける。
「TRIGGERさん、えっと、お疲れ様でした。この後…その、どうされますか?室内で休まれます?シャワーも、浴びられます…よね?」
『……あっ、どうもお疲れ様です!本当に申し訳ないのですが、こちらの設営テントの片付け少しだけ待っていただいてもよろしいです?シャワーももう少しだけ後に使わせてもらえたら、ありがたいです。
ちょーーっと…、緊急で話し合わなければいけない事情がありまして』
「そ、そ、そうですか!分っかりました!では自分達は席を外しますのでどうぞごゆっくり!!」
スタッフ達はまるで竜巻のように、びゅっと一瞬で姿を消した。彼らの背中を笑顔で見送る私を横目に、楽は初めて気まずそうに視線を斜め上に向けた。