第110章 どんな時もそばで
離れた場所から様子を見守ってくれていた姉鷺が、ついに我慢の限界とばかりにツカツカと歩み寄る。そして自らのハンカチで、私の顔をくしゃっと拭った。
『ぅ、うくっ』
「まったく。仕方のない子ねえ。女の子なんだから、そんなにグッチャグチャな顔になるまで泣かないの!」
「ぐちゃぐちゃなんかじゃねえだろ。可愛い」
「アンタは黙ってて」
涙を拭ってもらえたことで、少しは視界が開ける。余裕がなくて気付かなかったが、どうやらここはヘリポートらしい。ぼんやりとした頭で、鼻をすする。なんとなく人の気配を感じので、さきほど潜ってきた入り口に目を向けた。なんとそこには…
危険を冒してまで当事者となり、私を救ってくれた人達が勢揃いしていた。
IDOLiSH7と、Re:valeにŹOOĻ。さらにはそれぞれのマネージャー、社長達までもが。そして皆一様に、微笑ましい顔でこちらを見つめているではないか。
私は姉鷺からハンカチを奪うように借りると、すぐさま顔に隠した。あまりに豪快に泣いたものだから、ウォータープルーフのマスカラも完敗なくらい、今の顔は酷い。
『ぐ、ぐぅ…!こんな顔っ、どうやって皆んなに晒せば…!』
「大丈夫だ。可愛い」
楽の眼球には、どれだけ高性能なフィルターが掛かっているのか。そうでなければ、それは2つとも完全に壊れている。手をチョキにして、両の目を突いてしまいたい衝動に私は駆られた。