第110章 どんな時もそばで
「あ、違った。今は副社長でした!まぁどっちでもいいけど」
了は手に持っていた紙の束を、早々にテーブルの上に置く。場に似つかわしくない明るい声を撒き散らす男。彼はテーブルの上で指を組み、向けられるカメラに語り始めた。
「彼女は、ツクモプロで一時的に雇ってたことがあるんだよね。その期間内で僕が感じたことをとりあえず伝えておくよ。とりあえず、ドが付くほどの真面目。それから、ヘドが出るぐらいにアイドルを大事にする。後は…馬鹿みたいに、情に厚い」
了はいつもの笑顔を消して、カメラに向かってそう告げた。しかし、ころっといつもの人を食った表情に戻し続ける。
「僕が色々言ったところで説得力はないだろうけど!でも、この人達だったらどうかな?
ロスで活躍中のプロダンサーMAKA!デビュー以来快進撃を続けてる新人アイドルKei!今や実力派アイドルの仲間入りを果たしたと言っても過言ではないFSEのミク!そしてお次は、岡崎事務所のRe:valeだ!彼ら全員、口を揃えてこう言うよ。 中崎エリは、自分達の恩人だって。
さぁ!いよいよピースが揃って来たよねえ?
些細な過ちをほじくり返し、憶測を多分に含んだ妄言を吐いてばかりいるマスコミと。実際に彼女を知っていて、実際に彼女と付き合いのある、皆んなが長く愛し続ける著名人達。
さぁ、正しいことを言っているのは…一体どっちなのかな?」
了はさきほど置いた紙の束を、カメラの前でひらひら踊らせる。おそらく、あれこそが彼の述べた人達の声が載った書類なのだろう。
いつのまに、MAKAやRe:vale。小鳥遊プロの社長や八乙女宗助までもを巻き込んだ話に発展していたのだろう。私の知らないところで、一体どれだけの人間がこの件に携わっているのだろうか。