第110章 どんな時もそばで
私のせいでTRIGGERに傷が付く。そんな事態を避けられるなら、私はなんだってやる。全国区の生放送で、涙を流すことも厭わない。もっと言えば、土下座だってしてもいい。同情を買う。嫌われ役に回る。狂人を演じる。どれだって容易い。
だが、その前に。私は私の言葉で、本心からの言葉で、これを見ている全ての人に訴えたい。
『私は、昔の私は、今よりももっと未熟で。取り返しの付かないことをしました。
好きだと言ってくれるファンを、置き去りにしました。親身になってくれた方に、不義理を働きました。本当に、後悔してもし切れません』
記者達がぽつりぽつりと、上げていた手を下げていく。
『ですが、愚かなのは、私だけです。TRIGGERや、他のアイドルを一緒にして考えないでください。
最近はメディアで、アイドルは社会経験がなく無礼な人間が多いだとか。Lioのような人間と付き合うTRIGGERも、結局は低俗な思考しか持ち合わせていないのだろうとか。そういう言葉を耳にしますが、そんなことはないんです。
彼らは、私なんかと違います!ファンを愛して、大切にしているんです。日々、自分達の仕事に携わってくれている方々に感謝をしています!ですからどうか、そんな真摯な彼らを、見えない暴力で嬲るのは…やめて ください』
し…ん、と。会場からは一切の音が消え失せた。どうか、この思いが伝わりますよう。ここにいる人や、テレビを見ている人に届きますように。
「自作自演、なんて声もありますよね」
『……え?』
「TRIGGERを巻き込んで、貴女は自分の知名度を上げたかったんじゃないんですか?」
『どうして、私が、そのようなことをするのでしょうか』
「Lioとして、再デビューする計画でもあるとか。ま、そういう声が世間にはあるということですよ」