第110章 どんな時もそばで
『お世話になった方々に対し、然るべき段階を踏んでからステージを下りるべきでした。とんでもない不義理を働いたこと、私自身も後悔しております。今更都合が良いとは承知しておりますが、この場を借りて各企業様や、私を支えて下さった皆様にも謝罪いたします。
申し訳ありませんでした』
私が頭を下げると、再びフラッシュ攻撃がお見舞いされる。さきほどよりは些か、光と音が止むのが早かった。きっと、代わり映えのしない画はいらないのだろう。
それよりも、お待ちかねの質問タイムだと、記者達は目の色を変えた。胸に番号札を付けた人々が、全員 必死の形相で手を上げた。
『では、5番の方』
私が当てた男は、自分が所属する会社名と氏名を述べてから質問をする。
「御病気が原因でアイドルを辞められたということでしたが、どうしてその旨を芸能各社に説明しなかったのでしょう?」
『それは、私が未熟でしたとお答えするしか』
「貴女をスカウトする為に行った援助等で、倒産寸前まで追い込まれた芸能プロもあったと聞き及んでいます。そのような会社にも、FAX1枚で済ませたのでしょうか」
『……はい』
分かってはいたが、有名コメンテーター、芸能記者は私に否定的だ。だがしかし。彼らが口にする言葉のほとんどは事実なのである。私は改めて、過去の自分の愚行を悔いた。
しかし、ここに立ったことに後悔はない。こうして禊が出来る機会を与えてもらえただけ、私は幸せなのだ。
『では、次は…12番の方、お願いします』
次の記者は、眼鏡をかけた女性。彼女もまたさきほどの男性と同じく所属と自らの氏名を名乗る。そして、いよいよ世間が最も気になっているであろう質問を口にする。
「中崎さん、とお呼びすればよろしいでしょうか?
中崎さんと、八乙女プロダクション所属の八乙女楽さんの関係について聞かせていただけますでしょうか?」