第110章 どんな時もそばで
秘密というのは、持っているだけで弱味になる。隠せば隠すほど、裏に悪いことを抱えていると思われるように出来てる。
“ このまま逃げ続けていたら、きっと良くない事が起きるから。
いつかあなたの大切な人を、大切な物を、あなたが抱えた爆弾のせいで傷付けるわ ”
これは、いつ、誰に言われたものだったろう。
あぁ、そうだ。ロサンゼルスで、MAKAから叩き付けられた言葉だ。まさに、彼女が予言した通りになってしまった。
このままでは私の存在が、TRIGGERどころかアイドル界そのものの評判を下げる事態に陥りかねない。そんなことになれば、私一人では責任を負い切れなくなってしまう。
「着いたぞ」
『!!』
助手席のドアが開くまで、目的地に着いたことに気付かなかった。差し伸べてくれた虎於の手を取ろうとしたが、彼の手は私の手を通り過ぎて額に当てられた。
「すごい汗だな。それに、表情も固い。いつもの余裕の顔はどうした?ほら、普段通りに笑ってろよ」
『…はは。いや、これから謝罪会見なのに笑うのはちょっと』
「いま笑ってる」
『あ、ほんとだ。いけないいけない』
車から立ち上がる私の表情は、きっとさっきよりはましなものになっていたことだろう。
そこから私と虎於は、その足で記者会見の現場となる一室へと足を運んだ。彼と2人きりで歩くことはままあったが、こうしてエスコートされる機会は多くなかった。改めて見ていると、彼の所作は精錬されていて美しく、隙がない。女性のエスコートに慣れているのもあるかもしれないが、彼が本物の御曹司であることを思い出した。