第109章 ……………あ
「……はぁ。キミ、それ最初から決めてたでしょ」
『え、えへー』
「エリがボク達を守る為に無茶をする場面は、何度も見て来たはずなのにね。どうしてだろう。慣れる気が一向にしないんだ。毎回毎回、やめて欲しいって。どうしていつもキミだけが傷付かなくちゃいけないのかって。悲しくて、悔しいよ」
天は言って、瞼をゆっくりと下ろす。私はいつも、彼らに心配をかけて悲しませて。どんな言葉を彼にかければ、その気持ちを少しでも和らげることが出来るのだろう。
『ごめんね、天。私が、Lioだったばっかりに。弱くて、逃げ出してツケが回って来ちゃって、迷惑かけて』
「っ、そんなことは」
『でもね、私は、Lioだったことを後悔してない。
私の歌を聴いて、救われたって言ってくれる人がいる。私の楽曲が好きだって言ってくれる人がいる。それだけで、Lioがこの世に生まれた意味はあったんだって信じたい。
それに、私がLioとしてステージに立っていなければ、貴方達と今こうして一緒にいることはなかったと思うから。私がアイドルとして一瞬でも表舞台に立ったことでTRIGGERに逢えたから。だから私は、Lioで良かった。こんな我儘を言って、ごめんね。私にはLioを捨てること、出来ない。
だから、ちゃんとカメラの前に立つよ。ケジメ付けてくるから。信じて待っててくれるかな』
天は、しばらく言葉を発さなかった。どきどきして返事を待っていると、ようやく彼が口を開く。
「仕方ないから、記者会見の件は認めてあげる」
『て、天!ありがとう!』
私は彼の両手を取って、ぶんぶんの上下に揺さぶった。