第109章 ……………あ
「記事を潰すのが不可能となると…。記事が出る前に、こちらから何かしらの行動を起こし、被害を最小限に留めるしかないと思います」
「何かしら、っていうと例えば?」
天が問うと、一織はちらりと私の方を確認した。そして、言い淀むことなくはっきりと告げる。
「中崎さんが、自ら名乗り出るんです」
『……』
「それは、エリがLioだってカメラの前で告白するということ?」
「はい」
天は、長く綺麗なまつ毛を伏せる。それから、ゆっくりと首を振った。
「そんなことをすれば、エリの生活は一変してしまう。マスコミに面白おかしく扱われ、未だLioに執着する業界人に追い回される。彼女はそれが嫌で、正体をずっと隠して来たん」
『あーぁ。やっぱ、そうするしかないか!』
「エリ?」
自分でも、どこかで分かっていた。記事が世に出る前に、私自身がカメラの前で全てを告白し、謝罪することこそ正解のルートであること。
冷酷無情な了か、素早く最適解を弾き出すであろう一織なら、私と同じ答えに行き着くであろうと思った。おそらく私は、誰かに背中を押して欲しかったのだろう。
それは、私を好きでいてくれて、性根が優しいTRIGGERの3人には望めなかったことだ。
『嫌な役回りだったよね。ごめん、一織くん』
「構いませんよ。少しでも、お世話になったあなたのお役に立てたなら」
『ありがとう。おかげで決心が付いた。
私、カメラの前に出ていくよ。それで、Lioだって話す。それから自分の言葉で、迷惑を掛けた人に ごめんなさいってするんだ』