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引き金をひいたのは【アイナナ夢】

第109章 ……………あ




私も、漏洩先は病院しかないと踏んでいた。だからここへ足を運ぶ前、出向いて来たのだ。
ナースステーションでまず伝えたのは、その看護師の名前。入院中に最も親しくなった彼女を頼らせてもらおうという魂胆だったのだ。しかし聞かされたのは、その彼女が退職したという事実であった。
驚き隠せぬ私に差し出されたのが、この手紙だった。もしも私がここへ訪ねて来ることがあれば、手渡すように彼女から言付かっていたそう。


『入院中に聞いた話なんだけど、彼女には弟さんがいてね。生まれつき心臓が悪いんだって。いつ止まってもおかしくない心臓と、ずっと付き合ってる弟さんを見てるのが辛いって言ってた。治すには、アメリカで移植手術をするしかない。もう少しで、その為の資金額に届くんだって。だから』

「その資金を得る為、あなたが売られたというわけですか」


一織の言葉に、黙って頷く。

1枚目の手紙は、私への謝罪の言葉で埋め尽くされていた。2枚目には、講英社の記者に話した内容が事細かに記されている。

彼女が出版社に売ったのは 《当病院に、TRIGGERの八乙女楽が見舞客として足しげく通う女性がいる》というネタのみ。
つまり彼女は、Lioの話も春人の話もしていないということだ。

私がLioであるという事実は、出版社が独自に突き止めたと思われる。


「どんな理由があろうと、人の情報を売って対価を得るなんて許されることじゃない。
でもボクは、弱みに付け込んで卑劣な商売をする人間の方が許せない」

『うん。私も、そう思うよ。
でもね、病気の弟さんには、何の罪も無いから。アメリカでの手術に成功して、元気に暮らして欲しいと思うよ』


天は困ったように薄く笑って、小さく うんと頷いた。

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