第109章 ……………あ
「そこまでの想いがおありなら、私に止めることは出来ませんね。どうぞ、幸せになってください」
「ありがとう!一織くんなら分かってくれると思ったよ!そう。彼女はいつだって、僕の心と耳を幸せにしてくれるんだ」
環は、黙って座っている私の肩をつんつんとして問う。二人は一体、何の話をしているのかと。私は頷く。そうだ、そろそろこの盛大な誤解を解かないとと。
『あ、あのー。一織くん?私は、壮五くんの恋人じゃないからね』
「え」
「こ…、恋っ!?えぇ!?そ、そんなの当たり前じゃないか!恐れ多くて、恐れ多くてもうそんなの想像することすら許されないよ!」
「そ…そう、だったのですか。では、逢坂さんの、片想い…」
『それも違うんだよなー』
私が項垂れると、隣にいた環がバン!とテーブルを叩いて立ち上がる。
「いおりん、さっきっから何言ってんだよ!そーちゃんの恋人なわけないじゃんか!この人は もうちょっとしたら、俺と結婚すんだかんな!」
『お、おぉ、』まだそれ諦めてなかったか!
「逢坂さんの恋人ではなく四葉さんの恋人だったんですか!!」
『いや違』
「そうだ!!」
『あーもーー』
私は両手で頭を抱えた。ちょうどそんな時、インターホンが鳴る。次第に落ち着きを取り戻し始めた壮五が、玄関へと足早で向かった。
やって来たのは、思った通りの人物。彼はお邪魔しますと言ってから手土産を壮五に渡し、こちらへ歩み寄る。
「もう来てたんだ。さっき言ってた、用事はもう済んだの?」
『うん。大丈夫』
「そう。キミは目を離すと、すぐにとんでもない行動を起こすからね。こうして顔を見るまで気が気じゃなかった。お願いだから、何か動く時は絶対にボクの耳に入れてからにして」
『はは』
天の言葉で、私がいかに信用を失ってしまったのか分かる。ここまで言われてしまったらもう笑うしかないではないか。