第109章 ……………あ
「……」
(四葉さんの頭を撫でているということは、彼の知り合い?そう考えるのが自然か…)
部屋に荷物を置きに行くのだろうか?私達がいるテーブルの横を、一織は通り抜けようとする。しかし、そこには思わぬトラップが仕掛けられていた。
「冷たっ…!何ですかこれは!珈琲?どうして床に…
まったく。こんなところに飲み物を撒き散らかして。溢したならすぐに拭いてくださいよ。四葉さん」
「俺じゃねえし!!」
「あっ、ごめん一織くん!それ、僕が溢してしまったんだ。余裕がなくて、拭き取るのをすっかり忘れしまっていて」
「余裕がなくて?」
首を傾げた一織は、焦る壮五を見る。そんな壮五は、私を見た。それだけで一織は、彼が余裕をなくしてしまった原因が私にあるということを見抜く。
そして浅い皺を眉間に作った後、咳払いをひとつ。それから壮五に問い掛ける。
「このような質問をこの場でしても良いものかは分かりませんけれど。逢坂さん、答えてください。この方は、あなたにとってどういう存在なんです」
「え、…ええっ!?ど、どど、どういう存在って!」
「普段落ち着いている逢坂さんが、こうも余裕をなくしてしまうなんて普通ではない。ただの知り合い、ではないことは明白です」
一織プロデューサーは何を勘繰ったのか、IDOLiSH7メンバーである壮五を厳しく問い詰めていく。そんなふうに詰問しなくても、私と壮五の間に何かあるわけなどないのに。
「ごめんね。ちょっと、簡単に説明出来ることじゃないかな。彼女は僕にとって、かけがえのない存在で…。とてもじゃないけど、この気持ちを言葉で表すには時間が足りない。後日、レポート用紙20枚くらいに想いをまとめて提出するから、それでいいかな?」
「そ、そこまでの想いが…!!」
これは、大いなる誤解を招いた気がするぞ?