第109章 ……………あ

「どうしよう。しばらく立ち直れないかもしれない。キミ、ボク達には秘密にして、よりにもよって月雲了には頼るんだね」

『え、と…その。了さんは、この手のことに関しては天才ですから。それに、作戦に目処がついたら貴方達にも全てを話すつもりでしたよ』

「本当に、何も分かってないんだ。ボクらだって、その作戦を立てる段階から当事者になりたいって思ってること」


無言で周りを圧倒出来るほど怒り狂った天も苦手だが、こんなふうに悲しそうな表情をした天は、もっと苦手だ。


『天、ごめんね』

「…もうしない？」

『た、たぶん』

「ねぇ。もう、しない？」

『しないしないしませんしません！』


再び淀んだオーラの気配を察し、私は懸命に頷いた。

そして天は、さらに詳しい説明を求めた。どうやら本気で、当事者になるつもりらしい。巻き込みたくない なんて、とても言える雰囲気ではなかった。
彼はせっかくの貴重な半休を、私の為に使うことを躊躇しない。


「うん。大体、状況は理解出来た。何かしらの策を講じるにしても、準備期間が短過ぎる…。一刻も早く動かないと」

『そうなんですよね。そこで、更なる助っ人を求めようかと思ってるんです』

「月雲了以外の助っ人？」

『はい。彼は、アイナナ寮にいます。 “IDOLiSH7のブレーン” と言えば、分かりますよね』

「…あぁ！」


天は、なるほどと頷いた。


『すぐにでもアイナナ寮に走りたいところではありますが、今日は平日ですから。彼はまだ学校にいるでしょう。それに、私も他に行きたいところがありますし』


それなら自分も同行すると申し出た天であったが、このタイミングで私と天が2人きりで行動するのは避けたい。そう説明すると、彼はしぶしぶ引き下がった。

とりあえず、アイナナ寮には後ほど各々で向かう約束を取り付ける。ブレーンのアポが取れ次第、天にも詳しい時間を連絡すると言って私達は一度解散した。