第109章 ……………あ
その声色は低く、もう既にこちらを訝しむ黒いオーラが天を包んでいる。肩に触れられ、ひっと短い悲鳴が出そうになるのをなんとか堪えた。
「ごくごく些細な、何?その話、勿論ボクにも聞かせてもらえるんだよね」
『あ、いやー…。ま、まぁ、もう少し後で』
「ダメ。いま」
この天の追求が、本当に苦手だ。ぐっと下から睨み付けてくる天を視界に入れないように、私は強く目を閉じた。
すると天は苛ついた様子で、今度は了をターゲットにする。じっと見つめられた了は、わざとらしく驚いたふりをした。
「えっ、僕?いやいや。悪いけど、本人が言いたくないことを部外者の口からはさすがに話せないよ」
了…!やはり彼は、本当に心を入れ替え
「まさか、講英社の狸親父がエリの正体がLioだってことを嗅ぎ付けて?しかも彼女とTRIGGERが深〜い仲だってことも突き止めて、さらにそれを来週のMONDAYに載っけようとしているなんて!そんなこと、僕の口からはとてもとても!」
『心入れ替えてないな!?』
「……へぇ。そう。キミは、そんな重大なことをボクに隠そうとしていたんだ?ふーーん…なるほどね…」
『や、やめて!お願いだから今すぐその顔やめて、その重いオーラも引っ込めて!!』
慌てふためく私と、静かに怒り狂う天を前に、了はカラカラと笑った。
「隠し事は良くないってこと、これで分かったでしょ?せいぜい仲良く、戦い方を考えるといいよ。
じゃあ僕は帰って、士郎と巳波辺りとでも作戦会議してみようかな。もしも良い策が思い浮かんだら、連絡してあげる。じゃあね、ばいばーい」